【僕が嫁ぎます】氷月
姉のエレーヌがドニエ伯爵家当主のアラン様と結婚することになった。
我がデムラン家は子爵の貴族だが、父の事業が上手くいって
いないようでこのままでは没落してしまうという状況だった。
そんな中、上位の爵位を持つドニエ家から姉との結婚の打診があり、
父は諸手を挙げて喜んだ。いわゆる政略結婚だ。
姉がドニエ家に嫁げばデムラン家を助けようというのだ。
当然姉の意思など関係ない、断るなど以ての外だ。
しかし姉は庭師のヤンと恋仲なのを僕は知っている。
愛し合っている二人だが、身分が違うことで結婚したくても
できないでいたのも知っている。
姉には愛する人がすでにいるのだ。
姉がドニエ家に行く前日、僕は森の奥にある魔術師の家に
自分を女にしてくれと頼みに行った。
僕が女になってドニエ家に嫁ぐ。
兄弟なのだから僕が女になったら姉様と良く似ている筈だ。
それ程似ていなかったとしてもアラン様とは幼い頃会ったきり、
僕さえうまくやればバレないだろう。
魔術師に渡された杯に入った液体を躊躇わずに一気に飲んだ。
動悸が速まり、呼吸も乱れ身体中が熱く脈打つ。
そんな状態にしばらく耐え、動悸も治まりいつも通りに
戻った頃には僕の身体は女になっていた。
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